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子楽夢(コラム)

2010年9月号  「信頼」と「絆」と「誇り」
 ご存知であろうか、「全国離島交流中学生野球大会」通称「離島甲子園」。今年で第三回。元プロ野球選手の
村田兆治氏の提唱で始まった「離島の子供たちの野球大会」である。「離島を支え、離島に新しい風を吹き込む次世代の子供たちの為に」と、数年前から同氏は離島を回り活動してきた。
 日本には、多くの離島がある。大小さまざまであるが、有人離島も多い。中には、市町を抱える大きな離島も
あれば、わずか人口数人の離島もある。共通していえることは、お互いが支えあって離島の不便さや、格差を
乗り越えて生きている。互いの「信頼」と「絆」が地域を支えている。
 大会の目的は「島の未来を担う子供たちが、野球を通じて幅広い交流を図り、友情を育むとともに、夢と希望と勇気をもつことの大切さを実感し、郷土を思う誇りと心を醸成し、島の活性化、人づくりに資する」である。文字にすれば固いが、私には痛いほど意味が理解できる。それほどに、離島に住む人々にとって「郷土愛」と「島の活性化」「お互いの絆」が重要なのである。  そして、開会セレモニーに来場した前原国土交通大臣が子供たちに語りかけた。 「日本の国土は世界で61番目。しかし、日本の周囲には海がある。日本が主権を主張できる200海里排他的経済水域がある。そこには、水産資源や、地下資源が豊富にある。
 そして、その水域を含めた面積はなんと世界で6番目である。それは、皆さんの離島があるおかげで、決して
離島だからと卑下することなく、むしろ誇りに思ってほしい」と、勇気づけられる「あたたかい言葉」であった。
 その、地域の子供たちの野球大会が「離島甲子園」である。全国の離島では野球が盛んで、且つ離島に高校があるのは全体の一割しかなく、中学生の野球大会になった。 私の住む離島も例外ではなく、中学校までしかない。
 第三回の「離島甲子園」は鹿児島県の種子島で17チームが参加して行われた。 鳥羽市から、答志島、菅島、神島の3つの離島の子供たちが参加した。普段は別々の中学校に通う子供たちである。練習は本土へ各々の
島から船で通い重ねてきた。島によって違いがあるが、最終便は20時である。それ以降、朝の7時まで便はない。まさに、子供たちにとっても封鎖された状況である。そんな、状況下の子供たちの
「地域性」ゆえの「人見知り」はあったものの、大会前の練習を重ねるうちに段々と打ち解けてきた。島っ子特有の「人を疑わず」「人に委ねる」それが次第に「絆」へと変貌を遂げる。
 そして、本大会。やはり、全国大会。緊張のあまり力を発揮できず、結果は初戦敗退。残念である。チームに敗戦後、監督からのすばらしい励ましの言葉。「今、全国の中学、高校を含め3年生で野球をしてるのは甲子園の球児と君たちだけ。そのことを、誇りに思って交流戦を戦いなさい。そして、1試合でも多くこの仲間で試合を楽しもう」。なんと、敗者9チームによる交流戦トーナメントが組まれていた。そして、決勝と本当の甲子園の決勝が同じ日に組まれていた。皆が顔を上げて、再び戦う姿勢を取り戻した瞬間だった。そして、そこには「すばらしいドラマ」があった。
 交流戦は、熱い戦いの連続であった。白熱した投手戦が続く。1点差を争い、延長戦を勝利し、決勝戦は4点差からの逆転さよなら勝ち。なんと、交流戦「優勝」を勝ち取ったのである。試合を重ねるたびに見せた、子供たちの「信頼」と「絆」。
 ベンチからの顔いっぱいの「声援」。控えもレギュラーもない、ひとつのチームであった。一人ひとりの能力は劣っていても、みんなが力を合わせて持てる能力を発揮する。そして、「想い」を次へつなぐ。
なによりも、監督やコーチへの厚い「信頼」。「道具は大切に片付けなさい。運はそんなところから自分にやってくる」「チームのことが先」と繰り返し「取り組む姿勢」を大事にし、進むべき道に導いていた。勝ち進むたびに、子供たちの「必死な顔」が段々と「笑顔」に変わっていく。すごく、楽しそうであった。もちろん、観戦していた保護者たちも「笑顔」であった。優勝が「誇り」というわけではない。このチームで最後まで戦い抜いたことこそが「誇り」である。
「我が愛すべき地域」の子供たちの心にも「人を信じ」「人に委ね」「互いに協力」することの大切さが育まれているような気がした。そして、「結果」を求めるのではなく、人との関係を大切にしなければ「楽しむ」事も、「絆」も生まれない。都会にあって島にない物を憂うより、地域の中に溢れている「信頼」と「絆」を「誇り」に思ってほしい。



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