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るるりっこ


2015年10月号  第17話「34対0」

 島の中学に入学してから一カ月が経った五月。ルルとリコは、ようやく部活見学の期間も終わり正式にソフトボール部に入部することができました。
 二人にとっては、一刻も早く島の先輩達とソフトボールをしたくてたまらないという思いと、5月の連休明けに開催される地区大会でレギュラーとして活躍したいという思いが重なったのもあり、長い長い一カ月に感じていたようです。
 ルルとリコともうひとりの一年生ハズキを迎えたソフトボール部は、さらに活気づいて練習に励みました。というのも、ルルとリコは小学校時代にガッツリ、クラブチームで実力をつけていた事もあり、レギュラーに抜擢されるのが目に見えていた事で、現時点での3年生・2年生の中からレギュラーを外される選手も出てくるという上級生の危機感からチーム内での競争が始まったからでした。
 そしてチーム内での競争効果を見越し、地区大会で勝ち抜き、県大会出場の可能性も見えてきた島のソフト部は父兄も含め、さらに盛り上がっていったのでした。
 5月の連休、新メンバーを加えた島のソフトボール部は早速練習試合を組み遠征を試みました。勢いづいた島のソフトボール部は、これまでほとんど対戦した事のない三重県の強豪チームの明和中学校と度会中学校との練習試合をお願いしたそうです。
 特に度会中学校とは、島のソフトボール部の当時顧問の鈴木監督も、恐れ多い事から依頼すらできなかったところ、ルル父の知り合いのツテから練習試合をお願いしたような状態でした。
 その対戦相手を聞いた3年生・2年生は「え~!ありえやんわ~!」と不安をあらわにしました。一方ルルとリコは、臆するどころか小学校時代のライバルと対戦ができる事に楽しみを感じていました。
 練習試合当日、この日は明和戦でした。ルルはサード、リコはキャッチとしてレギュラーで起用されました。選手の不安をよそに父兄たちは、もしかしたらいい勝負が出来るんでは!と期待を持ちグランドに駆けつけていました。ルルとリコの両親も小学校時代のチームでは、明和・度会のクラブチームにも勝っていたイメージを引きずっており、それなりの試合はできるんだろうと楽しみに試合開始を待っていました。
 そしてルルとリコの中学ソフトのデビュー戦が始まりました。一回の表…明和中の攻撃。島の父兄の声援は大会かと思わせる程の熱狂ぶり。選手もそれにあおられるかのように元気の良い掛け声がグランドに響き渡っていました。
 しかし、打たれてはエラー、打たれてはエラー、ランナーを貯められてはパコーン!明和中学の攻撃が止まりません…。次第に父兄からも選手からも声がなくなっていきました。結果34対0。大敗でした。
 それなりに自信を持っていたルルとリコ。まさかこんなに実力差があるとは思ってもいなかった様子で放心状態になっていました。翌日の度会戦でも同じような状態で試合にはならなりませんでした。
 小学校時代の栄光を一番引きずって、安易に考えていたのはルルとリコだったのでした。あれだけ楽しみにしていた島のソフトボールの現実・現状を思い知った二人がいました。
 遠征の帰り道…
 ルル…「リコ~、ありえやんよな…悔しすぎる!」
 リコ…「うん。悔しい!でも絶対忘れやん!」
 ルル…「うん。がんばろ!」
 リコ…「絶対、いつか明和と度会に勝とな!」
 ルル…「答志中で絶対絶対!三重県優勝しよな!」
 思わぬ大敗に新たな決意が生まれた二人でした。


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