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るるりっこ


2014年11月号  第7話「友情…曇りのち雨そして晴れ!」

 放課後の校庭・・・ルルリコの想像もしていない告白に、同級生のハルト・リコ・ケント・ヒロキの四人はうついたまま言葉を失った。ルルリコの頬にはこらえきれない涙が無数に流れていた。 
 そして夏の余韻を感じさせる、セミの声がやけに気になるほどの沈黙の後・・・ 
 ハルト・・・「ええやんか」とボソッとした声でつぶやくように口を開いた。するとハルトの言葉を皮切りにみんながそれぞれの思いを言葉にした。
 リク・・・「本当は、ルルとリコとずっと一緒に野球やりたかったけど、自分らが決めた事やし、伊勢でソフトボールするんやったら一生懸命頑張れよ!伊勢の子らに負けんなよ!」
ケント・・・「そうやぞ!絶対レギュラーになってこいよ!上手になったら勝負な!」
ハルト・・・「人数は少なくなるし、ちょっとだけ寂しくなるけど後輩達もいるし、こっちのことは心配しなくていいよ・・・」
 ルルリコはみんなの言葉に、うつむきながら「うん・うん」とうなずく事が精一杯だった。そして皆が涙ぐみながらも力強い口調で、同じ言葉を発した・・・「いつか、また一緒に野球しよやな!」
 その言葉にルルリコは、これまでに我慢していた涙が大粒の涙となり、声を出して泣き崩れた。そして涙でぐしゃぐしゃの顔で、さらに「うん・うん・」と大きくうなづき、離れ離れになる事を快く受け入れくれた仲間達の為にも、選んだ道をしっかり歩もうと改めて決心したのだった。
 やがて島の校庭に夕日が差し六人の影が最長になった頃、うるさかったはずのセミの声もいつしか鳴りやみ、島の子どもたちの友情を見守るように、赤とんぼだけがその光景を眺め、悠々と舞っていた。そこには六人の笑い声と、希望に満ち、晴れやかな表情に変わったルルリコがいた。

数日後、希望と不安を胸にいよいよ伊勢のソフトボールクラブに入部する日がきた。新品のユニホームはピンクと水色と白の、いかにも女の子っぽい可愛いものだった。ちょっと恥ずかしげに身にまとったルルリコ。そしてサキ。
 リコの妹のサキは小学3年生だったが大好きなルルちゃんと一緒にソフトボールがしたいという単純な理由で訳も分からず一緒に入部した。
 三人はお互いの新品のユニホーム姿を見て、まるでファッションショーのように、あ~だこ~だをワイワイ盛り上がりながら、まずの出発点である島の港からの船に乗り込んだのであった。
 伊勢のグランドまでは、まず市営の定期船で約20分、鳥羽から車で約30分の道のりで決して楽とは言えなかった。初日の道中は三人のテンションも高く、船でも、車でもワイワイ!しかしさすがにグランドに近づくにつれ三人の顔にも次第に緊張感が現れてきた。「バタン!」車を降りグランドへ・・・。既に監督、コーチ陣、あと数名の子ども達が見えた。三人揃って「おはようございます。」
 いよいよ、ルル・リコ・サキのソフトボール人生が始まった。


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